投資用不動産の価格が大きく変動するとき、どんな指標の影響を受けるのか? また、今後不動産価格はどのように動くか?
不動産価格の「トレンド」
株や為替と同じように、不動産価格にも「トレンド」があります。上がるときもあれば下がるときもある。不動産の中でも特に投資用不動産は、株、為替と同じような動きをします。
それでは過去、不動産価格が大きく動いた時期とその時何が起こったのかを見ていきたいと思います。
●平成バブルとその崩壊
いわゆる平成バブルと言われた1986年(昭和61年)から1991年(平成3年)頃
この時期、株、不動産の高騰が起きました。為替はプラザ合意によって円高になりました。
平成バブルの膨張を抑止できなかった理由としては、金融緩和を続け過ぎたことが指摘されています。
その後、日銀による急激な金融引き締めが起こり、短期間の間に政策金利が3.75%から6%まで上がりました。この大幅利上げで株価も地価も下落に転じバブル崩壊となっていったのです。
●リーマンショック
2008年におきたリーマンショック。アメリカの投資銀行リーマンブラザーズが、高リスクの住宅ローンである「サブプライムローン」で破産したことが発端で世界金融危機となりました。
当初「日本にはあまり関係のないこと」、という見方が多かったのですが、ドル円は120円台から70円台までの円高となり、株価暴落、そして不動産市場にも影響が出ました。
実はリーマンショックが起きる前、日本の不動産市場は不良債権問題にほぼ目途が付き、都心部を中心に投資用不動産、実需不動産が大きく値上がりしていました。2001年に日本にJ-REIT市場が創設されたことも市場回復の要因だったと思います。
それがリーマンショックを境に、再度大きく下落することになるのです。銀行が融資を引き締めたため、その影響は投資用不動産に対してより大きく出ました。
このように、投資用不動産の価格が大きく変動する要因は色々ですが、特にその価格に影響をもたらす要因は、以下の2つが考えられるでしょう。
1.株、為替の動向
2.銀行の金利と融資姿勢
不動産と株、為替
不動産は相対取引であり、株や為替と違って売りたいと思ったからといってすぐに売れるものではありません。不動産業者選びに始まり、売買価格の査定、売り出し、レインズ登録、契約……など一連の作業に半年程度はかかってきます。
買い手の融資が下りるのに1カ月以上かかることもざらです。
したがって、まず株、為替が動き、それから半年ほど遅れて不動産価格が動き出す、という流れになります。半年ほどの時差があるので、一時的に株安、円高に振れても、それがそのまま不動産価格の下落に反映されないことも多いです。
銀行の金利と融資姿勢
上記バブルの崩壊のところで述べたように、金融引き締めと利上げ、「融資の受けやすさ」が最も直接的に不動産の暴落を引き起こします。
アベノミクス以降、不動産投資バブルが起きているのも超低金利と融資が出やすいことが原因のひとつとなっています。なお、金融の引き締めは金融庁のお達しなどと密接にかかわってくるため、金融庁の動向チェックはかかせません。
今後不動産価格はどのように動くか?
それでは今後不動産価格はどのように動くのでしょうか?
この不確実な時代に将来のことを予測するのは難しいですが、ひとつの判断材料として、「投資家の期待利回り」というデータがあります。これは、「一般財団法人 日本不動産研究所」が年に2回、公表しているデータです。
グラフから、2009年から2011年にかけて期待利回りが高いのが分かります。この時期はまさにリーマンショックが起きた後からアベノミクスが始まる時期と重なります。そしてこのグラフをよく見ると、リーマンショックが起きた2009年の少し前、2007年ころに利回りは低くなっています。
当時利回りが最も下がった(価格が高くなった)のは何かが起きるサインだった、ということが言えるのではないでしょうか?
そしてその後、2012年ころからアベノミクスが始まると同時に利回りはどんどん低くなっています。そして前回の調査(2016年4月)では、ついに今までで一番低い利回り(2007年3.8%、オフィス 丸の内・大手町)を抜き、3.7%まで下げました。
客観的にみて、利回りが下がりすぎています。
これは何を意味しているのでしょうか? 現段階で断言はできませんが、これまでの変動の傾向を考えれば、何かが起きるサインという可能性もあります。
この状態がしばらく続くことも考えられますが、この時期に投資用不動産の購入を検討している投資家さんは十分な注意が必要です。
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